静岡の中西部に静波海岸っていう海水浴場を含んだ小規模な行楽地があるんですけど
そこでも花火大会がありまして。
僕が入社した年の夏
花火師1年生だった時に、そこの現場にまわされまして。
20人くらいのグループだったかな。
隊長は課長で。
海水浴場の砂浜の隅を立ち入り禁止にしまして。
普通の現場と違って地面が砂浜だから
僕らは「アングル」って呼んでたんだけど
いつもは60センチくらいの
断面がL字状の鉄杭を使うんですが
それが利かなくて
筒を埋めて固定したり
長い木杭を使って仕掛け花火を固定したり
炎天下の砂浜でさ
後ろには水着のおねいさんとか夏を楽しんでいるってのに
こっちは重い鉄の筒をトラックから下ろしては
肩にかついで
足元の悪い砂浜の上を運ぶ繰り返し。
汗まみれ砂まみれで。
まだ1年生は奴隷ですから、そうやって各先輩の持ち場に重いものを運んで
その合間にセッティングの要点なんかを教えてもらうんですね。
で、台風が接近しているとは事前に聞いていたけど
午後になって、いよいよ空模様が怪しくなってきたので
筒とか玉箱(花火の玉はセクションごとに内側にブリキを張った茶箱に詰められている)を運び終えたら
僕ら下っ端は堤防作りを命じられまして。
で、土木作業員が使ってる大きなスコップで筒をセットした場所の海岸線側に砂で堤防を作り始めて。
まぁ、とにかく繰り返すけど炎天下、水着女の鑑賞も許されず
作業服でせっせと長時間砂を掘っては積み上げて。
いよいよ開演が近づいてきたと同時に台風もやってきまして。
雨と強い横風。
開演時間を早めてもらって。
最初はプログラムどおり順々にやってたんですけど
雨も強くなって、海も荒れてきまして
炎天下で半日かけて作った堤防ですけど
所詮、砂でできてますから波の「1さらい」で平らになっちゃう。
で、筒とかも流され始めて
もうさ、なんだか訳がわからず涙が出てきまして。
しまいには課長の「片っ端から火を点けろ!」の号令。
どこからとなく「火ぃ~点けないと金もらえないぞ!」の声。
あれから27年経った今でもクッキリ憶えている
大粒の横雨と涙でかすむ大混乱の花火現場。
人生で初めて経験した「無念」さでした。
話、変わるけど
今日は墓参りでも行こうか考え中です。
そうだ、息子1号の誕生日だ。
生まれた頃は
「盆に生まれた。仏様の使いや」と年寄りらに持てはやされてましたけど
もう、その年寄りらも残らずアッチの世界。